【連載】地方の再創造。社会課題に挑むリーダーの挑戦⑤

<連載第5回:都会が人の意欲を搾取している?>

地方創生という言葉はよく耳にしますが、実際はどのようなものなのでしょうか?地方自治体やコミュニティと協力し、地域社会の維持と活性化、社会課題の解決に向けて挑戦していらっしゃる講師にお話を伺ったパネルディスカッションです。


スピーカー

オフィス・コロボックル代表
熱中小学校用務員
堀田 一芙 氏

一般社団法人リディラバ代表理事
株式会社Ridilover代表取締役
安部 敏樹 氏


モデレーター

株式会社ファームノートホールディングス
代表取締役 小林 晋也


<1つ前の記事はこちら>

<安部氏>
一極集中の話で言うと、何十年か前にインターネットが出てきたときに、みんなこれからはオンラインで仕事をするから都会に住まないんじゃないかと言っていたんです。でも全然そっちにはいかなくて、実際に数字で見るとどんどん都内への集中が加速していますよね。

それは、ある程度集まった方がやっぱり効率的だからですよ。
例えば100年とか前の話だって里山に人が沢山いたのって合理性があるわけですよ。何故かというと、災害とか有事の時に水がなくなったとか、道がふさがれても、里山の場合は自活をしていけるので。

社会インフラの弱いときは集中をすると損するから集まんないほうがいいよねと。
一方で頑強な社会インフラが進めば進むほど都市化が進む。

そうすると現代における一極集中って普通の人間として合理的な判断なわけです。なので、僕の中で言うと一極集中が問題というよりは、地方から都会が人の意欲を搾取しているのが問題かなと思うんですね。

僕は問題の可視化が解決に直結すると考えている人間なので、わかりづらい問題ほど定量化したり見える化するのが大事だと思っているんですよね。例えば世帯の所得と学力の格差の問題ってありますよね。ああいうのも世帯年収と学力の問題が相関関係にあることがしっかり可視化されてくるからこそ、それを直そうっていう動きが出てくるじゃないですか。

一方でそういった可視化が非常に難しい問題が何かっていうと、モチベーションの奪い合いだと思っています。北海道にいる人たちもそうだと思うんですけど、中学校とか高校で凄く優秀な人間がいたら大体が札幌に行ったり東京に行ったりするじゃないですか。

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<モデレーター:小林>
そうですね、帯広の人だったらある高校に行ったら北大にいくかパターン化されますね。

<安部氏>
うちも社員の一人に旭川出身の人間がいますけど、いま東京に来て東京の会社で働いているわけですよね。

彼は北海道に戻りたいとも言っていますけど、結局やる気のある人たちって早くからトーナメント戦を札幌なり仙台なり東京なりで戦い、やる気がなくなるまでとにかくすり減らされるんです、歯車として。やる気がなくなった後に帰ってくることが多いんですね。
逆にいうと、やっぱり都会には人のモチベーションを惹きつけるものがある。

これからの時代って能力の高さよりも、やる気がある人間が貴重な資源になると思っています。
やる気がある、意欲があるっていう人間を意図して搾取するという仕組みが地方と都会の関係性としてすごい存在している気がしていて、こっちが問題だなと思うんですね。
一極集中みたいなのは集中したほうが効率よくなるはずなので一定の合理性があるんだけれども。

やる気があるできる人を課題とかの最前線で向き合ってもらったほうが、社会全体として最適化されるじゃないですか。

<モデレーター:小林>
組織の中で人がモチベーションを抑えてしまうというか、ある程度仕事の上限が決まるから搾取っていうニュアンスですか?

<安部氏>
そうです。もっというと地域でも同じだと思っていて、地域によってクローズなコミュニティとオープンなコミュニティがあるじゃないですか。

地域おこし協力隊って、人を出しても結果的に廃人にして返す地域と、すごいいいキャリアステップになっている地域がありまして。

あれダメな地域は本当にダメなので。僕あれ早く淘汰したいと思っているんですよね。
やる気のある人間の流動性が高まるような状態にしてしまって、各地域が受け入れられるような形にしてしまいたい。

そうすると来る人が地域を選ぶ側になるじゃないですか。
そのコミュニティはダメだとか、行ったらとにかく愚痴られるとかやる気つぶされるぞっていう感じになってくると、その地域に人が行かなくなるんですね。で、私は移住の事業とかやってるんですけど、意欲を促進して人のやる気を高められる、チャレンジしがいのある、そういう地域や組織っていうのがより残っていく感じを作っていけたらいいなと思っています。

<連載第6回:両パネラーが考える、役所の問題点>

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