【全3回】テクノロジーが拡張する、生産者の観察力【終】

<連載第3回:Farmnote Color導入事例>【終】

株式会社ファームノート プロダクトマネジメントチーム
獣医師 平 勇人

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事例①「とかち村上牧場」

北海道河東郡上士幌町で酪農を営む、とかち村上牧場では反芻量データを計測できる点を評価して2017年8月にFarmnote Colorを導入。タイストール牛舎とフリーストール牛舎を併用する同牧場では毎朝反芻量のデータを確認し、数値が下がっている牛をピックアップ。疾病疑いを知らせるFarmnote Colorの通知機能と併用して牛の健康状態を観察している。

活動低下通知機能による発見精度はまだ改善の余地があるものの、通知の方が人間よりも早く検知することがあり、疾病の早期発見によって重症化を防ぎ、廃用率・死廃率を下げることが収益性の向上につながると考えている。同牧場の村上副代表(写真1)は「人間の労力では24時間365日牛をモニタリングするなど、たった1頭でさえもできない。Farmnote Colorは、今まで気づかなかった事実と安心感を与えてくれる。人工知能による客観的な数値や分析が常に得られるということは、判断において軸にできるものがあるということであり、日々の業務における安心感が違う。これは牧場経営者に限ったことではなくて、たとえ経験の浅い若手のスタッフでも同じ」と語る。

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(写真1:とかち村上牧場の村上副代表)

事例②「有限会社広野牧場」

香川県木田郡で酪農を営む有限会社広野牧場では、更なる発情発見率の向上を目的に2017年12月にFarmnote Colorを導入。元々、発情発見率は決して悪くなかったが、その数値次第で経営状況に大きな影響を与えるポイントということもあり、導入へと至った。

導入の主目的である発情兆候の検知機能のほか、活動低下通知機能も日々の飼養管理において活用しているという。同牧場の広野代表と中川牧場長(写真2)は「疾病疑いの通知が届いた牛に関しては、特に注意して観察するようにしている。先日、10kg近く乳量が落ちた牛がおり、Farmnoteを確認すると2日前に疾病アラートが出ていた。この機能を使い出して間もないので疾病発見率などの結果はまだ出せていないが、今後もっと有効活用できたらと期待している」と語る。

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(写真2:有限会社広野牧場の広野代表(右)と中川牧場長(左))

まとめ

個体導入価格の高止まりや労働力確保の難化など、酪農・畜産経営を取り巻く外部環境が厳しさを増す中で、日々の業務効率化と省力化は全ての経営体に関わる課題である。農業以外の産業においても似たような課題はあるが、他産業ではテクノロジーの利活用によって課題を補い、人の持つ能力を拡張することで発展を図っている。酪農・畜産においては今回紹介したようなテクノロジーによって、生産者にとって最も重要な”牛の状態を注意深く観察する能力”を拡張することが可能になる。生産者および関係者であれば、この能力の拡張がもたらす影響の大きさは想像がつくであろう。

テクノロジーの利活用によって、生産性向上のみならず牛の健康状態の改善をはじめとするカウコンフォート向上のほか、生産者と牛とのより良い関係構築につながると考えている。

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