【連載】地方の再創造。社会課題に挑むリーダーの挑戦③

<連載第3回:社会課題解決の第一歩>

地方創生という言葉はよく耳にしますが、実際はどのようなものなのでしょうか?地方自治体やコミュニティと協力し、地域社会の維持と活性化、社会課題の解決に向けて挑戦していらっしゃる講師にお話を伺ったパネルディスカッションです。


スピーカー

オフィス・コロボックル代表
熱中小学校用務員
堀田 一芙 氏

一般社団法人リディラバ代表理事
株式会社Ridilover代表取締役
安部 敏樹 氏


モデレーター

株式会社ファームノートホールディングス
代表取締役 小林 晋也


<1つ前の記事はこちら>

<モデレーター:小林>
安部さんがおっしゃっていた社会課題解決の第一歩の、要は興味を持つというところみたいな感じなんですかね?そうすると。

<堀田氏>
まず楽しいですよね、新しいことやるっていうのはね。
新しい土地で新しい形のものをやることは楽しいと思いますね。安部さんも楽しいでしょ?

<安部氏>
楽しいですね。仕事っていう感覚でやっているわけじゃないから楽しいですよね。
国とか役所とかがやることになったらちょっと違うと思いますけどね。そういうパブリックセクターが社会問題を解決していくっていうスキームがだんだんと厳しくなっていていることを多くの人が理解した方がいいかなって。


社会課題が認識されるまで


<安部氏>
もちろん国とか役所とかは必要だと思ってます。
ただ、社会問題って役所的にはどう定義づけられるか知ってますか?
もうめっちゃシンプルで、組織の中に課ができると”社会問題”と認定されるんです。
「社会問題」として生まれた時から”縦割り”っていう。例えば鳥獣対策課とかができて、あぁ獣害がでてきたんですねって感じになるんです。パブリックセクターの手続き的には。

<モデレーター:小林>
社会課題として認識したっていう。

<安部氏>
それで予算がついてきたりするんですね。何課何室みたいな人がいて、これが社会問題だねって定義しているんですけど、この定義って別に行政的な都合上の話であって、問題そのものの根本的な分析に基づいているわけではないんですよ。

もちろん手続き的に誰かが縦に割っていかなきゃいけなくて、役所として頑張っているんだけれども、例えば獣害の問題を見たときに獣害対策って何をやるかっていうと、例えばその地域の猟友会のハンター達にお金を渡してもっといっぱい狩猟してよってことをやるわけですよ。

でも、そもそもなんでこの10〜20年でこんなに獣害でてきたんだろうね?みたいなことを考えると、里山って人の手が入っているから林業家みたいな人たちとか農家さんのコミュニティみたいな人たちが、山の管理をし続けないと維持できない。だけどそれを高齢化してできなくなってきちゃったよね、と。そうなると鳥獣被害対策の問題はハンターの問題ではなくて、例えば林業の問題とか過疎地域の高齢化の問題だとなってくるんですよね。

そうであるにも関わらず縦割りだけをしてしまうと市役所の中で鳥獣対策に500万円つけますってなる。500万じゃ絶対IBMは来てくれないわけですよ。(笑)でもこの500万円を過疎地域の高齢化対策とか合わせてパッケージにしたらもっと大きな予算にできたりするわけですよ。

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(安部氏)

問題って縦で割ってひとつの予算付けのための定義つくるっていうのも大事なんだけれども、やっぱり問題そのものが裏でいろんなものとつながりながら生じているので、誰かが横に刺していく必要があると。

戦後の日本とかで例えると、腹が減った、食べるものがない、飯が食いたい、よし農業生産量を増やそうっていう流れがあっても反対する人っていないじゃないですか?

みんなで米を作ろうぜってなるし、それに対して国がドカーンと投資しますと、県が投資しますと。すごい合理的なんですよね。だけど、一定の豊かさを確保してしまうとみんなが納得する社会問題ってなくなってくる。

役所が徴税して一気に投資して解決していくっていうモデルっていうのは昔のように機能しなくなってきた。
ミャンマーとか一部の途上国は未だにそんな感じなんですけどね。農業生産量を増やすために中国からトラクター買うぞって税金を集めて買っているんです。だから合理的なんです。

でも今の日本ってそういう社会問題ではなくなってきているので、役所だけでなんとかできるわけじゃないですよね。ところが、日本って国内GDPでいうと500~550兆円くらいなんですけど、そのうちのガバメントマーケットって試算の仕方にもよりますけど大体100兆~200兆円、20~40%とかになるわけですよ。いや、すごくないですか?毎年そんなに使っているのに何も解消してないじゃないかってなりますよね。

でもこれグローバルでみても、ガバメントマーケットに20%とか30%って普通なんです。だから実はそういう風にめっちゃお金の動いている場所ですよと。それを役所が非効率的な形でマーケットに変えずにやっていっているのは、全てにおいて正しいとは言えないじゃないですか。

そこに対しては一定の新しいソーシャルセクターとか、あるいは普通に企業が入ってきて、問題解決を促進していくというモデルを作らないといけない。日本がそれにトップランナーになれるかというと、今のとこではファイナンスとかではイギリスに5~10年くらい先にいかれているわけです。こんなに社会問題がいっぱいある課題先進国なのにイギリスに負けている。もったいない。

<連載第4回:課題先進国とは?>

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