【全9回】獣医師に直接聞きたい!繁殖管理のベストプラクティス【終】

<連載第9回:農家さんの姿勢が変わることで日本の酪農・畜産が1.0から2.0に変わる。>【終】

本講演は2017年12月に北海道帯広市にて開催を致しました「ファームノートサミット 2017Winter」にて酪農・畜産それぞれの領域でご活躍中の獣医師の先生に、牧場経営にて重要となる「繁殖管理」に関するお話と、ご来場者さまの質疑応答にお応えしたプログラムです。


スピーカー

株式会社トータルハードマネージメントサービス
代表取締役 獣医師 佐竹直紀氏

株式会社Guardian
代表取締役 獣医師 伏見康生氏


モデレーター

株式会社ファームノート
プロダクトマネージャー 獣医師 平勇人


<1つ前の記事はこちら>

PGで子宮内膜炎の治癒率やVWP後の受胎率が非常に高まる

<伏見先生>
アンピシリンを1g分、生理食塩水50mlに溶かして子宮の中に手で注入してください。同時にフルニキシンの注射、あるいはジクロフェナクナトリウムというカプセルがあれば与えてください。子宮内膜炎が減っていきます。フレッシュチェックの時の子宮内膜炎が減りますね。

<佐竹先生>
農家さんがすぐ気づいて、簡単にできる処置として私が農家さんにオススメしているのは、分娩後1週間から10日くらいの牛で白や赤、ピンク色の粘液をベッドに垂らしている牛がいます。その牛にでPGを一発打って欲しいんですよね。

PGは黄体がないと効かないと言うイメージがあるが、分娩後2〜3週間までであれば黄体がなくてもPGっていうのは子宮収縮作用があるんですよ。ですからその段階でPG打ってやることで、子宮内膜炎の治癒率が非常に高まると私は決定的に思っています。我々獣医師が農場検診で巡回するときにだいたいフレッシュチェックは、分娩後20日から40日弱くらいで行われるんですよね。

そこでエコーで確認して、内膜炎の有無を確認しながらPGを打ったりするわけですが、その診断自体があやふやだっていうこともありますしその段階の処置が遅すぎるんですよ。獣医が検診の時に行って分娩後の10日後の牛を見て何かわかるかっていったら何もわからないんですよね。

ですから実際なにも診ないんですけど寝ている牛のちょっとでも綺麗じゃない何かが出ていたとすれば、その段階での処置は非常に効きます。その時は汚い粘液を出していても、そのあとの繁殖検診では驚くほどキレイということがよくあります。

<伏見先生>
私も全く同じところで提案したかったんですけど、分娩後二週間たったところで、石鹸で手をきれいに洗って膣に手を入れていただきたいんです。ほぼ全頭手を入れた方が僕はいいと思うんです。それで1頭でも子宮内膜炎が早く発見できればもう儲けたもんですよ。その牛のVWP後の受胎率なんかも大きく改善させることができる。

膣から手を入れるというのは、獣医師もやる方法なんですけど、膣粘液をひっぱってくるんですね、掻き出してくる。そうすると赤いワイン状なのか、白いマヨネーズ状なのか、マヨネーズが出ているけど大量に粘液が出ている状態なのか。おおきく3段階くらいに分かれると思うんですけど。

その最初の赤ワインであれば、とにかく子宮洗浄をちゃんとすることが重要になりますけど、後者二つのほうであれば、佐竹先生がおっしゃったように私もPGを使いますし、あるいはホーリン打ってオキシトシン打つ、というやり方もします。これだけで全く受胎成績が変わります。

<佐竹先生>
何日の時にフレッシュPGを打った牛と、フレッシュ期に問題がないと診断されてフレッシュPGを打たれなかった牛と、その後の空間日数がどうなるかと調査したことがあるんですが、実は問題があった牛に早期の処置をしている牛のほうがその後の受胎性がよかったという結果が出ちゃったことがたまにあるんです。なんせ早期治療が重要なんだっていうのは思いますね。

<モデレーター:平>
今回のセッション、伏見先生はまだまだ話したりないよって感じですね。 14.png

<伏見先生>
妊娠鑑定ももうみなさんエコー持って、自分でできます。
是非エコー買って、みなさん妊娠鑑定してください。いとも簡単です。

<佐竹先生>
私の顧問先でも、従業員の方はもう妊娠鑑定できますね。

最後に

<モデレーター:平>
残念ながらお時間となってしまいました。

繁殖管理のベストプラクティスということでお話してきましたが、お二方からの提言としては、農家さんの姿勢が変わることによって畜産が1.0から2.0に変わる。獣医師も変わっていくので、そのためにツールをうまく使って生産性の高い酪農・畜産を目指していきましょうということでした。

それでは本プログラムはこれにて終了とさせて頂きたいと思います。最後までご静聴頂きまして、誠にありがとうございました。

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