2018.08.03
牛の発情兆候を検知し、授精適期をスマホにお知らせすることで酪農・畜産生産者の収益向上に貢献するウェラブルデバイス「Farmnote Color」は発情発見のみならず、行動分析によって反芻量の過去比較も可能にします。
反芻がモニタリングできると何がわかるのか?どのように牛群管理に活かせるのか?
トータルハードマネージメントサービスの佐竹直紀獣医師にお聞きをしました。
株式会社トータルハードマネージメントサービス
代表取締役 獣医師 佐竹直紀氏
1998年大学卒業後、株式会社トータルハードマネージメント社に入社。2015年同社代表取締役に就任。 2015年には子牛の哺育期専門の預託牧場である株式会社トータルハードカーフサービスを開業し、問題を抱える顧客農場の子牛管理を請け負っている。目指すのは酪農場の繁殖マネジメントと一般診療をとおして、農場全体を見渡すことのできるコンサルタント獣医師。これまでの獣医療の型に捉われず、酪農場が抱えている問題解決のため「自分にいったい何ができるのか?」を真剣に考えている。
牛は1日の1/3~1/4を反芻に費やしていますが、今まではその反芻時間を正確にモニタリングできませんでした。それが最近、ウェラブルデバイスの発達によってモニタリングが可能になった結果、健康をチェックする上で反芻が重要だと再確認するに至ったわけです。
この反芻ですが、発情発見に活用できることがわかってきました。
数年前に発表された論文(※1)では、歩数計より反芻モニターデバイスのほうが正確という結果も出ています。また、発情時には76%の牛で行動量が増えた一方、86%の牛で反芻が減少したとことがわかっています。
このように、歩数と反芻を組み合わせることで、より高い精度で発情を見つけることが期待でき、結果的に妊娠率も向上することが見込めます。
反芻をモニタリングする上で注目すべきは、病気の早期発見です。
これまでの経験から、第四胃変位と診断される数日前(約8日前)から反芻は減っています。
潜在性のケトーシスでも同様に約4~5日前から、大腸菌性の乳房炎で搾乳者が気づく約1日前に反芻の減少によってそれぞれ発見できています。
臨床症状が出る前に、反芻のモニタリングで疾病の兆候をつかむことができるので早期の処置が可能になります。
但し、あまりに早期に異常を察知するため、われわれ獣医師の診断がつかないケースもあるくらいです(笑)
現状では反芻量の変化で不調を見ることはできますが、疾病の特定は今後の課題です。
今後、データ量が増えれば、疾病特定の可能性もあるのではないでしょうか。
乳牛管理で需要なポイントは周産期疾病の予防です。
分娩に向けて早い段階から反芻が減る牛では、周産期疾病のリスクが高くなることがわかっています。
反芻が減るということは、乾物摂取量(DMI)が減少していることを示しています。
反芻が減ればルーメン内のpHを緩衝する唾液の分泌が減り、亜急性ルーメンアシドーシス(SARA)になりやすくなり、結果として周産期疾病のリスクが高くなります。
反芻時間を採食量と読み替えて、個体ごとのDMIを推察することで、ごく早期にSARAの対策を打ち、周産期疾病のリスクを低減することが期待できます。
また、反芻はカウコンフォートが適切にマネジメントされているかを知る指標にもなります。ヒートストレスや密飼い、社会的順位といったストレスがあればDMIは減り、反芻も減ります。継続的に反芻をモニタリングすることで、乳牛がストレスを受けていないかを確認してください。
(※1) Simultaneous analysis of activity and rumination time, based on collar-mounted sensor technology, of dairy cows over the peri-estrus period.
S.Reith, 2014
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