ファームノートを使ってみて
「Farmnoteは、こちらがさらに使いやすいように、時代に合わせて進化を続けていってくれる」
飼料特徴は、トウモロコシの高配合。脂が溶けやすく甘みのある牛肉となる。
- Farmnote導入前にどのような点を検討されましたか?
- 「今まで肥育に関してのITツールが揃っておらず、Farmnoteもまだ始まったばかりのサービスということで、導入前は模索検討している状況でしたが、お試し期間が非常に有効でした。試していくうちに問題の発見と解決策がリアルに見えてきました。また、投資しても5年後10年後には古くなってしまうのではなく、順次バージョンアップされていくサービスであるというところも決め手になりました」
- 現状の課題点や、Farmnoteに対しての期待をお聞かせいただけますか?
- Farmnoteは”こちらがさらに使いやすいように、時代に合わせて進化を続けていってくれる”というところに一番期待しています。これからの大規模牧場における企業型経営には欠かせないものになるのではないかと感じています。
というのも、現在のなかやま牧場には約70名の従業員がいます。交代で休みをとっており、新人も加わる。そんな状況で簡単に情報を共有できるツールは今までありませんでした。あるのは膨大な量の紙資料です。
そして個人によって肥育成績や疾病損傷などの事故率が異なります。要は属人化してしまっているんですね。これを”情報の見える化”によって誰でも同じように良い成績をだせるようにしたい。これが”品質や経営の安定化”に繋がると考えています。
- “なかやま牛”としてのブランドを、これから10年20年30年と、どう維持管理し発展させていくのかというのを見据えて経営したいと思っています。またやはり生産、加工、販売や店舗運営まで、六次化産業で消費者の方に、直接お届けしているという自負もあります。
生産者と消費者の距離が近く、声も届きやすい。消費者の方にどれだけ肉の情報開示ができるのかというところもこれからのポイントになってくると思います。”お客さまにいつも安心して選んでもらえる美味しい肉をつくる”ためにもFarmnoteを活用していきたいです。
- 生後2ヶ月のホルスタインの給餌。給餌・飼育管理が牛の成長に大きく反映される。
- 従来の牧場管理に使用されていたシステムでの労力はいかがでしたか?
- 会議はしていたのですが、漠然とした情報の中で行われる会議でした。なにぶん紙資料が膨大すぎて、情報の紐付けだけでも労力がかかりすぎてします。データの裏付けが一切ない状態での議論なので、検証ができず、記憶に頼った抽象的な話になってしまう。しかしFarmnoteでこれだけの情報がかんたんに紐付けできるようになり、現場の人間として”二年間の積み重ねがここにある”というのがとても革命的でした。できるようになったんですね、という感動とさらに肥育成績を上げられるようになるのではという期待があります。
- どの時期にどんなことをして、どの結果そうなったのかという詳細なデータがわからないと、経営ができない。牛の値段が高くなっている今、これからの畜産経営を考える上できちんと数字やデータを理解して生かしていかないと成り立たなくなってしまうと感じています。また「食の安全さ、透明性」もこれからさらに大事になってくると思います。
経営のためにも、牛のためにも、従業員のためにも、そしてお客さまのためにも・・様々な面で検討した結果、Farmnoteしかない、と思いました。
- 数ヶ月ご使用いただいて、Farmnoteの機能で具体的に良い所は
- 例えば、牛舎の巡回時に「この牛がちょっと食欲が無いな」と気がついたとします。いままでは事務所に戻って大量の分散された紙資料のなかから過去の履歴を一枚一枚めくって探さなくてはならなかった。Farmnoteではそれをしなくても、その場で過去の体調の変化や治療歴を見て、状況を捉え対策をすることができる。これは大きな差です。牛の頭数や、出荷成績、病歴、出産歴、また写真を添付しているので過去の状態など、全般的に”気になった時にすぐに見られる”というところが一番気に入っていますし、労働生産性やモチベーションも上がっています。
なかやま牧場さまの取り組み
「”なかやま牛”は高く売るためのブランドではない」
- なかやま牧場様の理念や特徴をお聞かせください。
- 特徴は、やはり「なかやま牛」です。株式会社なかやま牧場としてスーパーという小売店舗まで運営し六次化産業をしているので、”ぶれない牛肉”をつくることを理念としています。
ぶれない牛肉とは、いつでも安心して同じ品質で手頃な価格で美味しく召し上がっていただける牛肉、という意味です。
約一万頭の牛を肥育するなかで、担当するスタッフや季節などの外的要因によって変わるのではなく、いつでも同じ味と品質を提供できるように、きちんと数字化して改善を繰り返しています。
- 弊社では広島県と岡山県にまたがって3牧場を運営しており、私は仔牛を買い付けてくるところから出荷するまでの農場の全般的な管理運営をしています。
- 豊かな自然の中、広大な規模の牧場が広がる
- “なかやま牛”は高く売るためのブランドではないんです。
牛肉が昨今とても高価なものになってしまっていますが、「いつ食べてもおいしいと皆様に安心して食べて頂きたい」という創業者中山の願いからうまれました。
またBSE問題というピンチが、私たちにとってはよいチャンスでした。消費者意識が変わり、個体識別番号が全国で統一化されて、生産履歴が把握できるようになったおかげで私たちのブランドを差別化しやすい状況になりました。なかやま牧場グループと協力農家で、独自の飼料を8ヶ月以上与えて育てた牛を”なかやま牛”として自社のスーパーで直接お客様にお届けしています。
- いま、力をいれられている取り組みはございますか?
- “ぶれない牛肉”の飼育方法の確立です。表面上の栄養値や成分だけでなく、餌の中のとうもろこしや大豆の品質が安定したものを仕入れて頂ける仕入業者を選定しています。ベストの前提条件を揃えたうえで、ベストの飼育方法を属人化せず構築する取り組みに力をいれています。
肉屋さん、スーパーに卸すのがゴールではなく、常にその先にいらっしゃるお客様に目を向けています。自社のチャネルでも販売をしていますので、常にお客様の声を聞き、それを生産現場に活かすことができます。お客様が「おいしい」と笑顔になってくださることが牛を育てる励みになります。
今後のビジョン
「畜産はこれから「考える力」が重要で、考えられなければ生き残れない」
自家生産により生まれた子牛。愛情を注いで飼育する。
- 今後Farmnoteに求める進化をお聞かせください
- 私は仕事で牧場を離れることがとても多いのですが、何より大切なことは牧場の状況把握です。そのため戻った後のヒアリングや現場確認のために多くの時間を割いていました。しかしFarmnote導入後は遠隔でもスマートフォンによる状況の確認ができるようになりました。何がどんな状況なのか、というのがより見えるようになれば、ものすごく助かります。全部の牧場をただ見て回るだけで、六時間くらいかかるんです。これは本当に効率が悪かった。さらに誰がどんなことをしているのかを詳細に把握できるようなシステムになるといいなと思っています。
- 今後のなかやま牧場さまのビジョンをお聞かせください。
- さらに規模を大きくしていこうという思いはもちろんあります。
今まではただただマンパワーで頑張ってきました。しかし規模拡大につれて、遠隔であるがゆえに例えばやらないひとが出てきてしまったり、 無自覚のミスを見過ごしてしまったりということが出てきます。
Farmnoteを活用すれば、生きたデータを現場が有効に使えるようになるのではないか、というは今後のビジョンにおいて大きな魅力です。
会社のためのデータ、決算のためのデータというだけでなく、現場と牛と人のための生きたデータになることをFarmnoteに期待しています。
- データの拡充を伴うことで、誰でも「今何をすればいいのか」という判断ができるようにしたいと思っています。
一子相伝ではなく、企業としての仕組みづくりをしていきたいと思います。
畜産はこれから「考える力」が重要で、考えられなければ生き残れないと思っています。
これからも消費者の方に美味しく安全な肉を適正な価格で届けるために、ITのちからを活用しながら誠実に頑張っていきたいです。
(終)