【全9回】獣医師に直接聞きたい!繁殖管理のベストプラクティス⑤

<連載第5回:日本の酪農畜産をバージョン1.0から2.0に変える契機>

本講演は2017年12月に北海道帯広市にて開催を致しました「ファームノートサミット 2017Winter」にて酪農・畜産それぞれの領域でご活躍中の獣医師の先生に、牧場経営にて重要となる「繁殖管理」に関するお話と、ご来場者さまの質疑応答にお応えしたプログラムです。


スピーカー

株式会社トータルハードマネージメントサービス
代表取締役 獣医師 佐竹直紀氏

株式会社Guardian
代表取締役 獣医師 伏見康生氏


モデレーター

株式会社ファームノート
プロダクトマネージャー 獣医師 平勇人

日本の酪農・畜産をバージョン1.0から2.0に変える契機

<1つ前の記事はこちら>

<伏見先生>
成績向上で繁殖に限らず全体の話なんですけど、北海道でお仕事をいただいてくるようになって、一番驚いたことは繁殖なり治療なり、自分たちの牛の成績向上に対する取り組みのレベルが大きく他の地域と違うんですね。

どういうことかというと、自分たちでできることは自分たちで精一杯やるっていう気概を持った農家さんが北海道には非常に多いということです。
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(右)伏見先生

基本的には注射だったり、直腸検査だったり、妊娠鑑定だったり、全身チェックだったり、そういったところを私たちというか、鹿児島では、本州のほかの地域もそうなんですけど、すべて獣医師に一任しているところって多いんですよね。

でもその姿勢って、獣医を呼んで獣医が改善していけば改善していくけれども改善しなかったら変わらないという、いかにも受け身な姿勢で下手すると農場の命運を獣医が握っていることがよくあるんですよね。

獣医に怠けられたら全然農場は伸びてこないんです。
かわいそうなことに今日めんどくさいから行かないよっていって、下手したら子牛が一頭死んだりするんですよ。そんな怠けた獣医に命運を任せている場合ではないって話をしたいんですね。

つまり自分たち発ではあるんだけれども、改善に対しての一番キーとなるところでは受け身できたんですよね。数十年全く変わっていないと思うんですよ、ところが北海道には資質を感じたんですよね。たとえば自分たちで注射できるのであれば、注射する、チェックも自分たちでやる。熱も測って診断もつける、あるいは妊娠鑑定もする、削蹄もする。

挙げたらきりがないと思うんですけど、それが日本の酪農・畜産をバージョン1.0から2.0に変える契機だと思うんですよ。そうすると獣医がやっていることは何も珍しいことではないし、なんら特殊ではないということがやり始めると気付くと思うんですよ。

獣医だからと言って指先の感覚が鋭敏なわけではないし、耳がいいわけではないです。
みなさんがやったら、農家さんがやったらほぼ全部できることですよね。あえて法律的な縛りがあるとしたら薬品を買えないとか、あるいは処置に対してお金が発生しないっていうだけで、そうじゃない限りは自分でやるべきっていうステージに今来ているんですよね。

酪農・畜産業では当たり前ですけど牛が主役であり、農家さんの土台がいかにしっかり大きくなるかがその上を描ける城というか、利益の部分を積み重ねることになります。

獣医の仕事を奪って土台がしっかりしてくると、獣医は今までやっていた獣医療じゃなくて妊娠鑑定や受精じゃなくて、別のことやらないといけなくなってくるんですよ。そうさせた方がいいんです。

そして農場のマネジメントをしていかに儲けるかの提案をしてくれるような役割に獣医も変えて、自分(農家さん)たちでできることをすべてやっていくと、そのための機器だとかセンサーだとか、いわゆるIT化なんですよね。

牛歩だとか牛温恵だとか、センサーデバイスが出てきたころからのろしはあがったんです。自分たちでやる時代ですよと、獣医に頼らなくていいですよ、ドーンとのろしが上がっているんですよ。それで思いっきり旗を振っているのがファームノートですよね。

自分たちで情報管理をしていかに戦略的にできるかが酪農・畜産をバージョン2.0にして、海外に負けない日本の強みにするカギかなと思っております。

<モデレーター:平>
まとめていただいて(笑)

<伏見先生>
すごい喋っちゃいましたね、すいません。(笑)

【全9回】<連載第6回:これからの牧場経営に必要なこと>

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