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【全3回】和牛における発情発見の重要性と向上のための取り組み①

株式会社ファームノート プロダクトマネジメントチーム
獣医師 平 勇人

和牛繁殖経営では、その収入源を子牛の販売に大きく依存しています。そして子牛を生産するには、その母牛を妊娠させる必要があり、発情を発見して種付けをするという和牛繁殖生産者にとって最も基本かつ重要な作業を徹底できるかにかかっています。


和牛における発情発見の現状


発情を発見して種付けをするという作業の実態はどのような状況なのでしょうか。
和牛登録協会調査によると、平成27年3月での繁殖和牛の平均分娩間隔は13.3ヶ月でおよそ399日でした。そして、いくつかの報告により産次による多少の変動はあるものの、繁殖和牛における平均的な受胎率は65%程度だと言われています。では発情発見の現状はどのようなものでしょうか。

あくまで日本の標準的な生産者を想定しますが、分娩後の初回授精日を中央値である55日から種付けを開始し、受胎率65%の場合に平均分娩間隔399日となるのは、発情発見率が約40%の場合です。また、分娩後の初回授精日を平均値である73日とした場合の発情発見率は52%となります。

繁殖和牛はホルスタイン種などに比べて発情兆候が明瞭かつ長時間持続するので、発見が容易な印象がありますが、仮に発情発見率40〜50%が現場での実態とした場合、捉え方によっては50〜60%の発情が見逃されているのが現状です。


分娩間隔による経済損失


Morimotoらの報告によると、肉用牛改良増殖目標である分娩間隔12.5ヶ月に対して分娩間隔が13.0、14.0、15.0、16.0ヶ月に延長した場合の経済損失は表1のように報告されています。現在の平均的な分娩間隔(13ヶ月)でも、目標値である12.5ヶ月と比べると繁殖雌牛100頭あたりで200万円以上の経済損失が発生していることがわかります。

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(表.1:繁殖牛100頭群における分娩間隔延長の目標値(12.5ヶ月)に対する損失額計算)



分娩間隔達成のための分娩後初回授精日と発情発見率


さらに、各分娩間隔を達成するために発情発見率を、平均的な受胎率65%として分娩後初回授精日が55日(家畜改良事業団調査の最頻値)だった場合と73日(家畜改良事業団調査の平均値)だった場合でそれぞれ試算してみると、表.2の発情発見率のような値となります。

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(表.2:分娩後初回受精日が55日と73日の時にそれぞれの分娩間隔を達成できる発情発見率)


平均値である分娩後73日から授精を開始した場合、目標達成のためには発情発見率85%以上を維持する必要があることがわかり、達成が容易な数字ではないことがわかります。一方、最頻値である55日から授精を開始した場合でも60%程度の発情発見率が求められ、40%台と考えられる現在の発情発見率からすると1.5倍程度多く発情を発見する必要があります。ちなみに和牛繁殖にて年一産を達成するには、初回授精55日で発情発見率65%が必要であり、初回授精が73日の場合には発情を100%発見してもその達成は不可能となります。

表.3に発情観察の回数・時間と発情発見率の関係を示していますが、目視による観察で65%以上の発情発見率を得るには30分/回の観察を1日3回以上実施する必要があり、これだけの観察労力を投入できている生産者は限られると考えられます。また、80%近い発情発見率を得るには60分/回の観察を1日4回以上実施する必要があり、これはほぼ不可能だと言っていいのではないでしょうか。

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(表.3:発情観察回数・時間と発情発見率の関係)


<次の記事><連載第2回:和牛における発情検知時間と発情発見率向上のための現実的な施策>


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